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内部は薄暗かった。はがれ落ちたままのポスター、転がったままの空き缶やタバコの吸い殻。
「早く」
麻依がぼおっとしていた裕美を呼んだ。
二階へ駆け上がる。
似たような部屋が並んでいるなか、麻依は手前の部屋のドアを開けた。
「いったい何?」
困惑した裕美が聞く。麻依はその前を素通りすると、窓際に寄った。裕美もそろりと後についた。
窓の外、さっきの男が前の路上に立っているのが見える。
「柏崎宏太…」
「誰?」
「高校でいっしょだったけど、いつも鞄にアーミーナイフやサバイバルナイフを入れて持ち歩いてて、メタルザキって呼ばれてたすっごいヤバイやつ。警察沙汰にも何度かなったことがあるらしい…」
「ええー?」
麻依の言ったことに、裕美が思わず驚きの声を出した。
「なんで来てるの…」麻依は裕美の方を見もしない。
「電話とメール、…もしかして、あの人?」
裕美がおそるおそる聞く。
「まさか!あいつはクラス違ったし、死んだ刈谷朝斗のこと、知らないはず…」
「あー、いたいた」
その声に驚いて麻依と裕美は振り向いた。気づかなかった。その部屋の隅に女がしゃがんでいた。
「誰?なにしてるの?」
「いたよねー、いたいた。そんな名前の」
女は麻依たちのことを気にもしていない。「このビルで死んじゃったやつでしょ?いたなー、あーなつかしー…」
麻依がむっとした。「あなた…」
「千夏。よろしく。あんたたち、その死んじゃったやつの友だち?」
「もう昔のことだけど、覚えてるよぉ、同じ年だったし…」千夏はふいに裕美を指した。「タメ?」
「私はね」と、麻依がむっとしたまま言った。
そのとき、ドアが閉まる音が響いた。PR