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フランケンからメールがきていた。
『警察にはそれ、全部言った?』
施納は、タトゥ店ではこれといってあやしいこともなく、弟の知り合いの居場所も確認、ただあやしい電話がかかったことと、謎の弟の身体についた傷の写真が送られてきたことは、フランケンに伝えてあった。それへの返事だった。
警察に言おうか、彼自身も迷っていることだった。だが、いまだ、調査は進展していないし、自分で調べてみたい、弟のことをもっと知るべきだと、フランケンに返信した。麻美のことは、誰にも言う気がなかった。
施納が会社でノートパソコンのメールチェックすると、再びフランケンからのメールが入っていた。
『以前にランボーとやりとりしたメールを調べていたけど、
彼は学校でいじめにあっていたみたいだ。
ランボーをいじめていたひとりが高木一哉というやつで、
いまはバイク事故にあって入院してるってことだ。
けど、彼は偉いね。学校もちゃんと行ってたようだし。
彼のこと、たくさん知って、わかってあげてほしい。ちょっ
と遅かったけど、理解されることは誰にも必要なことだから。
ランボーもそれを望んでるはずだよ。』
フランケンのメールの送信時間は、いつも真夜中とか夜明け頃だ。
「課長」
部下の国沢が、ドアから顔をのぞかせた。もう書類を抱え、準備していた。今日は津江地区に建設中の、マンション視察に行くことになっていた。
「課長、総務部長がお呼びですが」と、行きかけた施納に、江崎利香が声をかけた。また、営業費の件だろう。
「帰ってからうかがいますと言っといて」
「はあ…」利香は困惑気だったが、施納はノートパソコンを閉じると、急いで会社を出た。
津江地区の建設中のマンションはまだ骨組みがあり、緑のネットで覆われている。切り崩し中の山が見え、側には雑木林もある。
「見晴らしがいいですねえ。何もない」
国沢がヘルメットを脱ぎながら言った。山の向こうに市街地が広がり、やがてそこと直結させての区画整理が始まり、このあたりの景色も一変することだろう。ただ、いまはまだ建設関係者以外、人もいない寒々とした風景が広がっている。
「住むにはいい所ですよね。ここが道が通ったら公園もすぐだし」
国沢が指す方向に街のビルが見えている。
「しかし、大丈夫なんでしょうかね。すごい遅れてますよ」
「大丈夫にしてもらう。もう完売済みで入居予定日も明記してあるんだ」
モデルルームをまず仕上げ、そこの見学会を設け、すでに契約をしつつあった。
施納たちの横、重機が動く。溝を掘り、土を持ち上げている。
「ここのコンクリート流し込みもまだですよ」
昼を知らせるサイレンが鳴った。すぐに大勢の作業員たちが、がやがやと外に出てきた。
「あーあ、うらやましいですねえ。休憩もぴったりの時間にとれる。営業もこうしましょうよ」
「バカ言え」
営業の仕事は不規則だ。時間がなければ、昼食も買った弁当を車内でかきこむ。そのうえ、一生懸命やったからと、こうやって形に仕上がるとは限らない。だが、だからこそ、仕事がとれたとき、うまくいったときの喜びや満足感も大きいのだ。
「おまけにこんなに遅れてても、日曜はちゃーんと休みですよ」
国沢はため息をついた。
それから、施納は得意先にまわると言って、国沢と別れた。フランケンから聞いた高木一哉という男を訪ねてみるつもりだった。
フランケンからメールがきていた。
『警察にはそれ、全部言った?』
施納は、タトゥ店ではこれといってあやしいこともなく、弟の知り合いの居場所も確認、ただあやしい電話がかかったことと、謎の弟の身体についた傷の写真が送られてきたことは、フランケンに伝えてあった。それへの返事だった。
警察に言おうか、彼自身も迷っていることだった。だが、いまだ、調査は進展していないし、自分で調べてみたい、弟のことをもっと知るべきだと、フランケンに返信した。麻美のことは、誰にも言う気がなかった。
施納が会社でノートパソコンのメールチェックすると、再びフランケンからのメールが入っていた。
『以前にランボーとやりとりしたメールを調べていたけど、
彼は学校でいじめにあっていたみたいだ。
ランボーをいじめていたひとりが高木一哉というやつで、
いまはバイク事故にあって入院してるってことだ。
けど、彼は偉いね。学校もちゃんと行ってたようだし。
彼のこと、たくさん知って、わかってあげてほしい。ちょっ
と遅かったけど、理解されることは誰にも必要なことだから。
ランボーもそれを望んでるはずだよ。』
フランケンのメールの送信時間は、いつも真夜中とか夜明け頃だ。
「課長」
部下の国沢が、ドアから顔をのぞかせた。もう書類を抱え、準備していた。今日は津江地区に建設中の、マンション視察に行くことになっていた。
「課長、総務部長がお呼びですが」と、行きかけた施納に、江崎利香が声をかけた。また、営業費の件だろう。
「帰ってからうかがいますと言っといて」
「はあ…」利香は困惑気だったが、施納はノートパソコンを閉じると、急いで会社を出た。
津江地区の建設中のマンションはまだ骨組みがあり、緑のネットで覆われている。切り崩し中の山が見え、側には雑木林もある。
「見晴らしがいいですねえ。何もない」
国沢がヘルメットを脱ぎながら言った。山の向こうに市街地が広がり、やがてそこと直結させての区画整理が始まり、このあたりの景色も一変することだろう。ただ、いまはまだ建設関係者以外、人もいない寒々とした風景が広がっている。
「住むにはいい所ですよね。ここが道が通ったら公園もすぐだし」
国沢が指す方向に街のビルが見えている。
「しかし、大丈夫なんでしょうかね。すごい遅れてますよ」
「大丈夫にしてもらう。もう完売済みで入居予定日も明記してあるんだ」
モデルルームをまず仕上げ、そこの見学会を設け、すでに契約をしつつあった。
施納たちの横、重機が動く。溝を掘り、土を持ち上げている。
「ここのコンクリート流し込みもまだですよ」
昼を知らせるサイレンが鳴った。すぐに大勢の作業員たちが、がやがやと外に出てきた。
「あーあ、うらやましいですねえ。休憩もぴったりの時間にとれる。営業もこうしましょうよ」
「バカ言え」
営業の仕事は不規則だ。時間がなければ、昼食も買った弁当を車内でかきこむ。そのうえ、一生懸命やったからと、こうやって形に仕上がるとは限らない。だが、だからこそ、仕事がとれたとき、うまくいったときの喜びや満足感も大きいのだ。
「おまけにこんなに遅れてても、日曜はちゃーんと休みですよ」
国沢はため息をついた。
それから、施納は得意先にまわると言って、国沢と別れた。フランケンから聞いた高木一哉という男を訪ねてみるつもりだった。
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