麻依がそっとドアを開けると、隙間から廊下をのぞいた。人影はない。千夏が興味しんしんに麻依の背後からのぞいている。
「あ」千夏の声がもれた。
廊下の奥の扉がじわりと開いたからだ。男の後ろ姿が見えた。スーツ姿だ。男は背中を見せたまま現れた。そして体をこちらに向けた。眼鏡をかけている。
「あ」今度は麻依が言った。その男には見覚えがあった。
麻依は勢い良く扉を開けた。
「ちょっと!」裕美があわてた。
だが麻依はそのまま廊下に出た。男は驚いた顔をしている。
「館山?館山笙?」麻依が声をかけた。
男は一瞬びくりと体をひくが、目をこらして麻依を見た。千夏と裕美も事情がのみこめないまま廊下をのぞいている。
「私。3-2でいっしょだった茅野麻依」
「かやの・・・あ、あー」
館山と呼ばれた男は、安堵の声をもらした。
「ここで何してるの?」
「何してるの」
近付く麻依に館山がオウム返しに言った。
「まさかメールくれたの、館山くん?」
『 その日、刈谷朝斗は死んだ。
事故か 自殺か それとも他殺か
今も不明のままである。
しかし
知りたくはないか?
カラスアパートに来ればわかる 』
あのメールだ。
「メール?」館山は首をかしげた。「違う、これこれ」と、開いたドアの中を指す。さっき彼が出て来たドアだ。麻依がそのドアの方に近付いた。裕美と千夏も後をついてきている。
麻依がその開いたドアから数歩入って止まった。その後ろから千夏がのぞきこんだ。
「なに、これ・・・」千夏が驚いた声を出した。裕美もまた、その光景に驚いた。
部屋の床に何かの小さなラッピングされた赤い箱、カッター、破れた古いパソコンの本、CD、割れた自転車のライト、スケッチブックが床に置かれていた。
千夏がしゃがむと、スケッチブックを手にした。
「刈谷、朝斗」と、スケッチブックを見せた。制服姿の刈谷朝斗のデッサンがされている。
「意味ありげだよな」
館山がぐるりと円をかくように指差した。それらのものが床に円形に置かれていたからだ。
「これが証拠なの?何か覚えあるの?」裕美が不安そうに聞いた。
「あるわけ」と千夏。麻依も首をふった。
「ねえ、メールくれたの、館山くんじゃないの?」
「なんのこと?」館山が麻依に逆に聞く。
「彼がここで死んだ本当のことを教えてやるってメール」
「したんでしょーぉ?」千夏がいじわるそうに言う。
「死んだ・・・・刈谷朝斗のことか?」
「したくせにぃ」
「おれは仕事でここに来たんだ。もうすぐこのビルは取り壊して立て替える。その調査」
「館山くんでもないんだ」
「メルアド教え合ってるような関係、ナイから」館山はフンという感じだったが「そうだ、茅野サン、どうしておれだとすぐわかった?ろくに話したことなかったし、卒業してからあったの、これが初めてだし」
館山はクラスでもひとり離れて、本を読んでいた印象しかない。
「同級生の名前くらい覚えてるでしょ」と、麻依が言った。
「いや、どうして遠くから、しかも10年ぶりに会って、おれだとすぐわかった?」
館山はひきさがらない。
「それは・・・、わかっておかしい?」
「自分でうっといて、自分にもメールがきたようにして、人を呼び出したとか」
「私も呼び出されたの!」と、麻依は言ったあと、はっとした。
「あなたもなんだ。呼び出されたの」
館山は無言で目をそらした。
「あ」千夏の声がもれた。
廊下の奥の扉がじわりと開いたからだ。男の後ろ姿が見えた。スーツ姿だ。男は背中を見せたまま現れた。そして体をこちらに向けた。眼鏡をかけている。
「あ」今度は麻依が言った。その男には見覚えがあった。
麻依は勢い良く扉を開けた。
「ちょっと!」裕美があわてた。
だが麻依はそのまま廊下に出た。男は驚いた顔をしている。
「館山?館山笙?」麻依が声をかけた。
男は一瞬びくりと体をひくが、目をこらして麻依を見た。千夏と裕美も事情がのみこめないまま廊下をのぞいている。
「私。3-2でいっしょだった茅野麻依」
「かやの・・・あ、あー」
館山と呼ばれた男は、安堵の声をもらした。
「ここで何してるの?」
「何してるの」
近付く麻依に館山がオウム返しに言った。
「まさかメールくれたの、館山くん?」
『 その日、刈谷朝斗は死んだ。
事故か 自殺か それとも他殺か
今も不明のままである。
しかし
知りたくはないか?
カラスアパートに来ればわかる 』
あのメールだ。
「メール?」館山は首をかしげた。「違う、これこれ」と、開いたドアの中を指す。さっき彼が出て来たドアだ。麻依がそのドアの方に近付いた。裕美と千夏も後をついてきている。
麻依がその開いたドアから数歩入って止まった。その後ろから千夏がのぞきこんだ。
「なに、これ・・・」千夏が驚いた声を出した。裕美もまた、その光景に驚いた。
部屋の床に何かの小さなラッピングされた赤い箱、カッター、破れた古いパソコンの本、CD、割れた自転車のライト、スケッチブックが床に置かれていた。
千夏がしゃがむと、スケッチブックを手にした。
「刈谷、朝斗」と、スケッチブックを見せた。制服姿の刈谷朝斗のデッサンがされている。
「意味ありげだよな」
館山がぐるりと円をかくように指差した。それらのものが床に円形に置かれていたからだ。
「これが証拠なの?何か覚えあるの?」裕美が不安そうに聞いた。
「あるわけ」と千夏。麻依も首をふった。
「ねえ、メールくれたの、館山くんじゃないの?」
「なんのこと?」館山が麻依に逆に聞く。
「彼がここで死んだ本当のことを教えてやるってメール」
「したんでしょーぉ?」千夏がいじわるそうに言う。
「死んだ・・・・刈谷朝斗のことか?」
「したくせにぃ」
「おれは仕事でここに来たんだ。もうすぐこのビルは取り壊して立て替える。その調査」
「館山くんでもないんだ」
「メルアド教え合ってるような関係、ナイから」館山はフンという感じだったが「そうだ、茅野サン、どうしておれだとすぐわかった?ろくに話したことなかったし、卒業してからあったの、これが初めてだし」
館山はクラスでもひとり離れて、本を読んでいた印象しかない。
「同級生の名前くらい覚えてるでしょ」と、麻依が言った。
「いや、どうして遠くから、しかも10年ぶりに会って、おれだとすぐわかった?」
館山はひきさがらない。
「それは・・・、わかっておかしい?」
「自分でうっといて、自分にもメールがきたようにして、人を呼び出したとか」
「私も呼び出されたの!」と、麻依は言ったあと、はっとした。
「あなたもなんだ。呼び出されたの」
館山は無言で目をそらした。
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コメント
1. 私も…
私も同級生の名前、忘れちゃうタイプです。同窓会で、最後まで名字さえ思い出せなくて、必死で誤魔化してましたよ。それに一緒に同席した友人も「あんな子、いたっけ? 誰? 思い出せない」って言うのもありました(苦笑)。まあ、相手からにしてみれば、同じこと考えていたかも知れませんがね。
続き、楽しみにしてます!
2. 久々です〜
私も記憶できる期間がある程度決ってるのか、年月とともに過去のことが忘れ去っていってます。人の名前と電話番号とかの数字だけは、本当に記憶できません。顔は覚えがあってもねえ。で、向こうが声かけてきても「?」で、話しつつさぐりいれる自分(笑)
ところで、私は相変わらす、思いついたら程度にしかアップしてませんが、古反故さんとこはほんとうにデザインもマメに変わるし、マメに中身も充実していってて、わかりやすいようになってますよね。そう!(←え)ここに性格が現れる(笑)私はけっこういきあたりばったりで(あんまり気にはしてないけどB型らしいと言われたことがあるずぼらさで)、古反故さんはきちんと自己管理ができそうだし、書くものに誠実さを感じますヨ。いや、私が不誠実とは言いたくないですが、古反故さんからいうと、ちょっとテキトーかなあと自分で思いつきます(笑
私も古反故さんの小説と、あと日常の語り(これもおもしろい)楽しみにしてます。