「あー遅くなったワ…」
裕美は階段を下りる前に振り返った。だが、誰も廊下には出て来てなかった。いっしょに帰ろうと誘った麻依は、結局残った。
「…ま、もういいか」と、裕美は階段を下りかけた。
はっとする。階段を上がる足音がする。彼女はどきりとして、階段の下をのぞいた。男がゆっくりと上がってくる。中年の背広姿の男だった。
裕美も速度を変えずに下りて行く。男とすれ違うが、互いに知らん顔している。が、裕美はちらりと男の鞄を見た。仕事帰りかのような感じだと思った。男は裕美のいた階を過ぎ、さらに上へと上がっていく。
裕美はそのまま前を向き、二、三段下りて足を止めた。そして振り向くと、急いで階段を駆け上がって行った。
「男が来た!」
裕美は麻依たちがいる部屋へと、走り込んだ。
「え?」麻依がびっくりしている。
「上へ行った!もしかしたら!・・」裕美は息をきらした。
「そいつかも」と、館山が人差し指を上げた。
「どいつだよ」
森沢がおどけて聞く。
「4、50代のネクタイした背広の人。手に鞄持って・・」
「ふうん。行ってみる?」
「みるの?」
千夏の言葉に、森沢は嫌な顔をした。
「みんなで行けばだいじょぶじゃね?」と、館山。
「行ってみましょう」
「マジみるの?」
麻依の言葉に、森沢はさらに嫌な顔をした。
誰もが憂鬱そうな顔をして、そこに立っていた。ドアにはスプレーでひどい落書きがされている。
「ここ?」千夏が首をかしげた。
「あ、そうそう。時々来てた、ココ」
「ええーぇ、こんなきったないとこにぃー?」
千夏が森沢の言うことに、げーっというリアクションをした。
「悪かったな。当時は人が立ち退いたばっかで、けっこうこぎれいだったんだ。っつか、おれたち、まあヒマしてたし。今もけっこうヒマしてるけど」
森沢は呑気に笑った。
「それをさぼってるっていうの」と千夏。
「しっ!」
麻依が人指し指をたてた。ドアが開いたのだ。
そこにはさきほどの男が立っていた。
裕美は階段を下りる前に振り返った。だが、誰も廊下には出て来てなかった。いっしょに帰ろうと誘った麻依は、結局残った。
「…ま、もういいか」と、裕美は階段を下りかけた。
はっとする。階段を上がる足音がする。彼女はどきりとして、階段の下をのぞいた。男がゆっくりと上がってくる。中年の背広姿の男だった。
裕美も速度を変えずに下りて行く。男とすれ違うが、互いに知らん顔している。が、裕美はちらりと男の鞄を見た。仕事帰りかのような感じだと思った。男は裕美のいた階を過ぎ、さらに上へと上がっていく。
裕美はそのまま前を向き、二、三段下りて足を止めた。そして振り向くと、急いで階段を駆け上がって行った。
「男が来た!」
裕美は麻依たちがいる部屋へと、走り込んだ。
「え?」麻依がびっくりしている。
「上へ行った!もしかしたら!・・」裕美は息をきらした。
「そいつかも」と、館山が人差し指を上げた。
「どいつだよ」
森沢がおどけて聞く。
「4、50代のネクタイした背広の人。手に鞄持って・・」
「ふうん。行ってみる?」
「みるの?」
千夏の言葉に、森沢は嫌な顔をした。
「みんなで行けばだいじょぶじゃね?」と、館山。
「行ってみましょう」
「マジみるの?」
麻依の言葉に、森沢はさらに嫌な顔をした。
誰もが憂鬱そうな顔をして、そこに立っていた。ドアにはスプレーでひどい落書きがされている。
「ここ?」千夏が首をかしげた。
「あ、そうそう。時々来てた、ココ」
「ええーぇ、こんなきったないとこにぃー?」
千夏が森沢の言うことに、げーっというリアクションをした。
「悪かったな。当時は人が立ち退いたばっかで、けっこうこぎれいだったんだ。っつか、おれたち、まあヒマしてたし。今もけっこうヒマしてるけど」
森沢は呑気に笑った。
「それをさぼってるっていうの」と千夏。
「しっ!」
麻依が人指し指をたてた。ドアが開いたのだ。
そこにはさきほどの男が立っていた。
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